Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪8. まちぶせ

 ここ一週間、狂司郎は雪耶と顔を合わることさえ出来ないでいた。


「もうっ! 狂さんのばかっ!」


 転寝のくせに泣きだすような夢を見ていた雪耶を、呆れながらも宥めようとキスしてやったことも覚えていなければ、親切を拳で返してくれた事さえ覚えていないなんて。
という理由から、からかい半分に篭った熱を服の上から撫でてやっただけなのに、ガキみたいにムキになって怒った雪耶は、捨て台詞を残す勢いで屋上から逃げたきり…。

 あの後、雪耶の反応があまりに初心で、面白れぇ…と思いながら、その場所で自分も転寝したせいか、それから数日、風邪で学校を休んだのもあるが、あれだけ自分の後ろを追いかけてきていた雪耶が、あからさまに姿を見せなくなったことに、今度は微妙に面白くないと思う自分が居る事にも驚いて、雪耶と顔を合わせていないということに、つい意識が行ってしまう。
 教室移動の時や休憩時間の時などにふと見かけることはあるが、屋上でのあの一件の後、雪耶が甘えるように自分のところへ来る日がない。


(まぁ、普通はそういうもんか)


 身体を重ねる温もりや、一時の快楽を感じあう相手ならいくらでもいる。
別に雪耶が居なくても困る事もない。
 肉体的な反応をからかわれたり、同性にそれを触れられたりすることが嫌なのは普通の反応だろう。
 何かのきっかけで雪耶が自分を敬遠しようが、離れていこうが、狂司郎にとってはそんなに大したことではない。

 今日の遊び相手でも探そうと廊下を歩いていた狂司郎は、ふと窓の外を見た。
 数人のサッカー部一年生が、並木の木陰で楽しげに話している。手に携帯ゲームか何かを持っているようで、時々「わー!」とか「ヤベェ!」とか声を上げていた。
 一人の生徒が、顔を上げたかと思うと、その方向から来る誰かに手を振って呼び止めた。


「あっ!久世!ちょうどいいとこに来た!」


 呼び止められた名前を耳にして、狂司郎の足が自然と止まる。


「久世ってこのゲーム得意だったよな? ちょーっと教えて」
「なに? お前ら『ファヴォーラ・ラビリオ 』なんかやってんの?」


 サッカー部一年エースの一之瀬嵐と出場した試合の一件から、雪耶とサッカー部員は何気に親しく交流があるようで、呼び止められた雪耶も笑顔で彼らの輪に加わっていく。
 ここはこうだ、それはああだ、といいながら盛り上がっている様を見ていた狂司郎が、なんだ元気そうじゃないか…と思ったときだった。
 雪耶の身体がびくんと驚くように動いたかと思うと、制服の胸あたりに手をやって何かを探る。そのまま、内ポケットからケータイを取り出した。


「わりぃ、電話だからちょっと抜けるわ」
「おー!久世、サンキューな」


 サッカー部の連中と別れてケータイを耳にしながら歩いていく雪耶の表情が、一瞬にして変わったのを狂司郎は見逃さなかった。
 そのまま、雪耶が向かう方向へと自分も廊下を歩き始める。流石に電話の内容までは、距離と高さがあって聞えない。
が、雪耶の表情は固く、少しずつ俯いていく。
 このままいけば中庭へと通じる渡り廊下に行きそうだな…と、狂司郎は足を速めた。

「…うん…ほんとは養子になるはずだったのにやめてもらったってのは、俺も知ってる…。悠兄や季兄が、じーちゃんから融資してもらったり、会社経営に参加してるのって、俺の為ってこと?」


 少し遠めから、雪耶の声が聞えてくる。


「…それって俺を組から離す為に、二人が犠牲になってるってことだろ?…。違わねーじゃん…。うん…え?それって…父さんと母さん知ってんの?」


 渡り廊下の柱の陰を歩きながらタイミングを図る狂司郎に、俯き加減で電話をしている雪耶はまだ気付かない。


「…うん、わかった。…ネーヴェに任せる…うん……じゃあ」


 その姿が近くなって、雪耶の顔に、時々妙に気になるあの「瞳」の表情を発見するなり、やっぱり…と狂司郎は確信する。
 電話を切って顔を上げた雪耶が、目の前の影に驚いて、わっ!っと声を上げたまま、止まりきれず狂司郎の胸の中に飛び込んできた。


「…危ねーな」


 ぶつかった拍子に顎を擽った、色素の薄いネコ毛をくしゃっと撫で上げながら顔を仰向かせ、狂司郎は一週間ぶりに雪耶の顔を間近に眺める。


「ごめ…あっ!狂さん!」
「…平気か?」


 少しの間をおいて発せられた狂司郎の、「平気か?」という言葉が何に対しての質問なのか、雪耶には解ったようだった。


「…うん。 あ、狂さんはもう風邪治ったんすか?」


 何気に話を切り替えて聞き返す雪耶の表情は、いつものやんちゃな笑顔だった。
それを見て何故かほっとする自分に驚くが、雪耶の大きな瞳に映る自分の表情が、やけに優しげなのにまた驚く。
 狂司郎の表情に反応して雪耶の笑顔が、甘く嬉しそうな、それでいて照れたようなものに変わった。


「狂さん、まだ帰らないんすか?」


 それはまるで、自分を何処かに誘うような響きで狂司郎の耳に届く。
何も知らないような子供の態度で笑ったり怒ったり、男を誘うように甘えたり、はにかんだり、泣いてみたり。
 己を知らないガキが相手だと調子が狂う。


「…ガキはもう家に帰れ」


 そう言って狂司郎は、雪耶がコンプレックスに思っているおデコを指で軽く弾いた。
雪耶がプリプリ怒り始めた隙に、彼をそこに置き去りにしてさっさと消えてやったのだった。

 

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