Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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12.【蒼白の月に啼く獣1-7】

「…彼女は突然出て行った。恭司郎の小学校入学式の翌日だった。
入学式には笑顔で恭司郎を連れていったんだがね。
その時にはもう既にこの家を出ていく決心をつけていたということだろう…。」


 この人は全く何も気付かなかったんだろうかと、西門は少々驚いた。
 確かに英の会社が日本国内だけでなくアメリカにも支社を持ち、多忙を極めているのは知っているが、それでも気付かないものなのだろうか。
 もちろん若造である自分に、英が全てを語るわけはない。もっと深い事情があり、英にとってあまりに突然だったということなのだろうと西門は自分を納得させた。


「それから恭司郎がおかしくなり始めたんだ…。
もともと、子供なのに喜怒哀楽をあまり見せず、親戚や使用人からも可愛げがないと言われていたんだが、母親がいなくなってからはますますその傾向が強くなってしまった。あの子は母親にべったりだったからショックが大きかったんだろう。
学校で喧嘩騒ぎをしょっちゅう起こし、相手の子供さんに怪我をさせたことも何度もある。家に帰ってからもふらりとどこかへ行ってしまって…。恥ずかしい話だが、警察に保護されたことが何度あるか数えきれないほどだ。」

 西門の脳裏に先ほどの狂司郎の部屋のドアが思い浮かんだ。

「だから、恭司郎様の部屋に外から鍵を?」
「…そうだ。鍵をかけておかないとどこへ行ってしまうかわからないからね。家の中ならまだしも、外に出てしまったら探しようがない。」
苦笑しながら英が答える。

「でもなぜあんな広い部屋に恭司郎様おひとりなんですか?」
「以前はこの3階の子供部屋にいたんだよ。 だが、外側から鍵をかけられて出られなくなってしまった恭司郎が、たぶん部屋から出ようとしたんだろう、3階の窓から下へ落ちてしまったんだ。幸い、庭の木に一度引っかかったようで、右腕の骨を折っただけで命に別条はなかった。
 だからといって鍵をかけないでおくとあの子はいなくなってしまうし、その度に使用人が探し回らねばならず、それだけでなく何度も警察に引き取りに行くことにも使用人たちから苦情が出てね。やむなく2階の1室を恭司郎の部屋に改装したんだ。
 以前は私の弟夫婦が使っていた部屋だが、自分たちで家を建てて出て行ったからそのままになっていたんでね。あれくらいのスペースがあれば恭司郎が成長しても大丈夫だろう。」

 それにしても広すぎはしないかと思うのだが、英家の生活水準なら普通なのだろうか。西門の感覚ではとても理解が及ばない。

「…毎日、鍵の掛けられた部屋に恭司郎様一人でいるのですか?」
そう聞く西門の口調が責めるように感じたのか、英は少々弱ったような顔をした。

「私が早く帰ってきた日には鍵はかけるなと使用人には言ってある。だが、私が不在の日や、帰宅が遅い日は…そうなってしまっているのが実情だ。
 恭司郎は人見知りが激しくて、使用人の誰にも懐いていないから誰かがそばにいることもあの子にとっては苦痛だろうというのもある。あの部屋ならトイレも風呂もついているから生活に不自由はないのだから。」

 狂司郎は学校から帰ったらあのだだっ広い部屋に一人なのだ。まだ小学校の低学年、普通ならば学校から帰ったら親に甘えている年ごろだろう。だが、その甘えられる親がいないのだ。家を抜け出したくなる狂司郎の気持ちが理解できるように思う西門だった。
 きっと狂司郎は寂しいのだ。いや、寂しくて当たり前だ。それを思うと、先ほど見た狂司郎の様子が頭によみがえり、胸が痛くなるような気がした。

「あの…恭司郎様のお友達は遊びに来たりするんですよね?」

 子供は友達と遊ぶのが当たり前だ。友達が来ている時はどんな様子なのだろうと、ふと思いつき聞いてみた。

「いや、恭司郎が友達をつれてきたという報告はないな。
ただ、幼稚園のころから仲の良い子は一人いる。うちの裏門の向かいの家に住む子だ。子供がきっかけで母親同士も仲良くやっていたらしいが、恭司郎は今もそのお宅によく遊びに行っていると使用人から聞いているから、その子が恭司郎の友達なんだろう。」

 狂司郎に友達がいると聞き、西門は少しだけホッとした。これで友達までいなかったら…。

 

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|  ・湊+狂司郎 | 16:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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