Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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7.【蒼白の月に啼く獣1-2】

「恭司郎、こっちに来なさい。」
英が静かに声をかける。

 英恭司郎――これが狂司郎の戸籍上の正式な名前だ。
 父、英恭介から一字とってつけられた名前。 狂司郎も小学校時代には自分の名前を「英恭司郎」と書いていた。
 だがアメリカから帰国した西門が再び狂司郎の教育係になった時には、狂司郎は自分の名前を『狂』の字に変えて書くようになってしまっていたのだ。
 英だけでなく、学校側からも何度も注意したが、頑として聞き入れなかったという。


 座っていた少年がゆっくりと振り返り、 急に明るくなりまぶしいのか目を眇めるようにしてこちらを見る。

「恭司郎。」
英の声が先ほどより大きくなる。

 狂司郎がゆっくりと立ち上がり、うつむき加減にこちらに歩いてくる。
 小学2年生から3年生に進級するという年齢の男の子の標準がどれくらいの身長なのか、西門にはわからなかったのだが、全体的に華奢な印象でハーフパンツから伸びる足は白く細かった。

 英と西門の近くまで来た狂司郎は足を止め、顔を上げようとはしない。光にあたって白っぽく光る長めの銀色の髪が、俯いた顔を隠している。
 その狂司郎の肩を引き寄せようとしたのか、英の手がその薄い肩に触れた瞬間、狂司郎の手が素早く動き、パシッ!と甲高い音を立てて父の手を振り払った。

 予想外の狂司郎の行動に息を呑むほど驚いた西門は、思わず英の顔を見てしまった。 普段は冷静で感情の動きをあまり見せない英の顔が、僅かに歪んでいるのが目に入る。
 その表情が少し寂しそうにも感じられ、見てはいけないものを見てしまったような罪悪感から西門は視線を狂司郎に戻した。

 狂司郎は父を見上げるでもなく、じっと床に視線を向けたままだ。
 どうして狂司郎が父親にそんな態度をとるのか、西門にはさっぱりわからず立ちすくむしかなかった。
 気まずい空気が流れる中、気を取り直したのか英が落ち着いた声で狂司郎に話しかけた。
「恭司郎、こちらはお前に勉強を教えてくださる西門先生だ。お前の家庭教師だよ。ご挨拶しなさい。」


 狂司郎は微動だにしない。 うつむいて口元をキュッと結んだままだ。


 英が何か声をあげようとする気配を感じたが、あまりのいたたまれなさに耐え切れず西門は狂司郎に話しかける。
「はじめまして、恭司郎様。西門湊です。
僕はこれからこのお屋敷に住まわせてもらう人間なので、先生などと呼ばなくていいですよ。
西門でも湊でも、恭司郎様のお好きなように呼んでくださいね。」

 その湊の言葉に英が少し慌てる。
「いや、湊くん、それは…。」
「いえ、事実、僕はこちらにお世話になる身ですので、けじめとして当然のことです。」
「だからといって、使用人でもない湊くんが恭司郎に様づけなど…」
といいかけ、何かに思い当たったのか英が大きなため息をつく。
「…有介か?あれが何か言ったんだね?」

 西門は、肯定するべきなのか否定するべきなのか、咄嗟にはわからず答えられなかった。
 実際はその通りで、狂司郎の12歳年上の兄、有介に 「お前はうちにただで住んで、ただで飯を食う居候の身なんだから身の程をわきまえた態度を取れよ。俺にとっては使用人と同じ扱いだからな。」と顔を合わせて早々に言われていたのだ。
 それは狂司郎にも同様にと言われたわけではないが、兄弟なのだから同じようにという西門の判断だ。

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