Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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クラブサンド・ブルース 1

 

 真っ黒なセドリックが、桜華学園の正門を通り過ぎ、そのまま裏門近くの塀の横に止まる。
 そこは、スモークの掛かったウィンドウと防弾仕様の特別車に改造してある、世間でいうところの「怖い人達の車」の定位置だった。
 もちろん、その場所は学園の私有地であり、ちゃんと許可も取ってある。
 お坊ちゃまの多い桜華学園では、送迎の車が行き来することも珍しくはないが、こうして日がな一日、車を横付けして待機しているのは、このセドリックくらいだろう。

 そんなセドリックに乗っているのは20代後半くらいの男が二人。
一人は栗色の角刈り頭に咥え煙草の山本。
もう一人は長めの黒髪を撫で付けたメガネ男、川田。
 二人ともチャコールグレーのスーツに、ワインレッドのシャツ、黒いネクタイを締めている…いや、栗色の角刈り男、山本の胸元はだらしなく肌蹴てしまっているが。

 もしも、外からスモークウィンドウの中が見えるのならば、車の中でダラダラと過ごしているようにしかみえないだろうチンピラ風情の二人だが、実際は、警察無線の傍受や、政治、経済、株の動き等のチェックにも余念がない。
 今の世の中、暴れるだけでは喰っていけないのが、極道の世界である。


「ふぁぁぁっ。 川田、ちょっと休憩しようぜ」


 山本はうーんとシートの上で伸びをしながら、運転席の川田に声を掛けた。


「山本、油断するな。」
「もー、お前は真面目すぎ。そんな四六時中キンチョーしてられっかよ」
「…どこで若頭に見られるか判らん」
「お前が怖いのは、若頭であって襲撃とかじゃねーのね」


 川田は山本の顔をチラッと見たが、彼の台詞に「あぁ」と肯定してしまった。
山本はその答えに絶句して、川田の顔をまじまじと見返す。


「…はぁ~。 そりゃ瀬名さんはスゲー人だけどさ…。」


 広域暴力団九頭竜会、まっとうな多くの企業と、一握りの任侠精神を引き継ぐ事務所を抱えた組織。
暴力団か…と問われたらYESだが、九頭竜グループと聞くと、そのイメージからはかけ離れた大企業が思い浮かぶ。
 古くからの任侠精神を引き継ぎつつ、その精神で現代のグローバル企業を運営し束ねる手腕は、組長であり、また会長でもある九頭竜鼎(カナエ)、その人の功績が密かに「神話」と言われていることでも想像が付くだろう。

 瀬名…というのは、九頭竜会の現在の若頭を勤める男である。
 190cm近くあろうかと思われる長身に、鍛え上げられた肉体と、モデルと称されても違和感のない少し甘い美貌を持ちながら、その瞳は研ぎ澄まされた真剣の如く鋭い。
 ガキの頃から手の付けられない暴れん坊で、高校を中退して昼夜問わず街をぶらぶらと当ても無く生きていた山本と川田を、拾い上げてくれたのが瀬名だった。

 有名大学へ通うほど頭も良く、スポーツも万能であった瀬名が、何故「極道」という日陰の世界に足を踏み入れることになったのか二人は知らない。
 だが、彼の下について色んなことを学び、世間を見つめ、いい大人が…という年齢になった今、山本と川田の二人は瀬名に拾われた事を感謝していた。
九頭竜会ではなく、もしも違う組織の組に拾われていたとしたら、彼らの現在は刑務所の中か、あるいは墓の中にその身を置いていたかもしれない。

 川田は、根は勤勉で真面目な人間だ。そんな彼も育つ環境一つで狂犬のように荒れた人格になってしまったヤツだった。
 小学生の時に川田と出逢った山本は、川田の孤独に自分も付き合ってやることでしか彼を支えることが出来なかった。
 山本の家庭に離婚話が持ち上がり始めた頃、山本自身も精神的に荒れ始め、そのままずるずると二人して歪んだ少年時代を送ってしまうことになったのだった。

 若気の至り…と言ってしまえばそれまでかもしれないが、そんな腐った毎日を過ごす二人の未成年が、酔った挙句に絡んだ相手がヤクザの瀬名だった。
 そのときの瀬名の厳しさと優しさに心を打たれた川田と山本は、瀬名だけでなく九頭竜会に身を置く面々に接することで、この組織が他の暴力団と比べてどれだけ異質で、自分たちがどれだけラッキーだったかを思い知った。
川田などは瀬名や組長に対して異常なほど心酔しているくらいだ。


「あの人はスゴイ人だ。組長もスゴイけどな」
「お前の瀬名さん好きには、ほんと…感心するぜ」
「好き、じゃない、尊敬だ」
「あ~、はいはい」


 山本にだって瀬名や組長は尊敬に値する人間だ。
でも、山本はその二人以上に心に気に掛ける人間が、他に居た。
 その相手を思い浮べて、ふーと溜息をついたその時

 ドガッ!

 と、大きな音がセドリックの前面から聞えたと同時に、車体が上下に波打つように揺れる。


「うわっ!? な…なんだっ?」


 突然のことに焦った山本が、思わずジャケット裏の胸辺りに手を差し込む。
それを見咎めた川田が、彼の胸元にある腕を静かに押さえた。

 

to be continued

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