Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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2.【小春、白豹に猫をゆずる[後編]】

長身の彼に黙って見下ろされると、自分の無責任を責められてるように感じて、小春は顔を上げられなくなった。

しばしの沈黙のあと、狂司郎はフッと小さく息をついて携帯電話を取りだした。
誰かと二言三言会話を交わして電話を切ったあと
「今から家のモンが来るから、全部それ乗っけろよ。」
と言われた。

予想外の言葉に小春の目が大きく見開かれた。
「・・・ホントに?」
思わず問うと、俺がそんな嘘言うはずないだろ、と言いたげな顔で睨まれて急いで口をつぐむ。
立場が弱いせいか、今日は狂司郎のペースに巻き込まれっぱなしだ。
「どうすればいいのか、教えろ。」
言われて、小春はあわてて猫を飼う上での注意事項を彼に説明し始めた。


30分もしないうちに、濃紺のボディを光らせたセダンが学園の来客用駐車スペースに滑り込んできた。
英家はかなり裕福だと聞いていたので、どんな派手な外車が登場するかと思っていた小春は、
高級車種とはいえ、国産車であったことを少し意外に思った。

運転席から、紺色のスーツをきっちりと着込んだ青年が静かに降り立ち、
「いつも狂司郎が大変お世話になっております。わたくしは西門と申します。」
と小春に向かって丁寧に腰を折る。
今回大変お世話になってるのはむしろこちらなので、小春はあわてて
「い、いえとんでもない。こちらこそ急になんかすみません。」
と頭を振った。

それと同時に、この青年は一体どんな人物なんだろうと想像を巡らす。
狂司郎には兄がいたように思ったが、どうも兄弟という雰囲気ではない。
似ているところと言えば背が高いところくらいで、顔立ちや柔らかく波打つ黒髪、まとう雰囲気は
狂司郎のそれとは全然違うし、そもそも苗字が違う。

狂司郎はといえば、車にもたれてそっぽを向いたままなので、西門と小春がトイレやフードなどをトランクに詰め込んだ。

最後にライとくぬぎを車に運び込む前に、小春はキャリーケースの中の二匹をじっと見つめた。

ごめんね、私のせいでこんな思いをさせちゃって・・・

無言で二匹を見つめていると、くぬぎがみゃあと小さく鳴いた。ライはしっぽをぱたりとひとふりする。
いつまでも見ていると別れが辛くなる。小春は二匹分の重いキャリーケースを後部座席に
押し込むと、西門に向かって深くお辞儀をした。

「私のわがままで英さんにはご迷惑おかけして本当に申し訳ありません。
命あるものを途中で放り出すなんて、あるまじき行為ですけど、狂司郎さんのおかげで本当に助かりました。」
小春の言葉をやさしく微笑みながら聞いていた西門は
「とんでもない。この猫たちは当家で大切にさせていただきますので、先生はなにとぞご心配のないように。」
と告げると、狂司郎に向かって
「狂司郎様、帰りますよ。」
と声を掛けた。

西門は助手席のドアを開けたが、狂司郎は迷わず後部座席のドアを自分で開けて
キャリーケースの隣に座り込み、
「湊、はやくしろよ。」
とぶっきらぼうに言い捨ててドアをバタンと閉じた。
やれやれ、と言いたげに苦笑したあと、西門はもう一度小春に会釈をすると、運転席に乗り込み、車のエンジンを掛けた。

その音を耳にしたとたん、小春の目にみるみる涙が溢れてきた。
短い間だったけど、いつも小春を癒してくれていた可愛い可愛いライとくぬぎ。
まさか手放すことになるとは思わなかった。
自分がいい加減でだらしないせいで、二匹には急な環境の変化を強いることになったし、
なりゆきとはいえ、よりによって自分の生徒にあとぬぐいをさせてしまった。
職場に私生活を持ち込まないと固く決めてたはずなのに、このていたらくはどうだ。
愛する猫たちとの別れが寂しくて、自分の愚かさが悔しくて、溢れる涙をこらえることが出来なかった。
車が動き出した刹那、狂司郎がちらりとこちらを振り返ったのであわてて手の甲で涙をぬぐったが、きっと涙を見られたと思う。

最悪だ。生徒に泣き顔を見られるなんて。

本当に、最悪だ。

英家の車が見えなくなっても、溢れる涙はちっとも止まらなくて、小春はその場から動くことができなかった。


ライとくぬぎが居ない生活があまりにも寂しくて小説にも身が入らなかったが、
人間とは慣れる生き物だ。
なにしろ小説の締め切りは目前に迫っているし、本業である教職ではそろそろ試験のことを
考えないといけない。
忙殺されてるうちに小春は徐々に日頃のペースを取り戻していった。

それでも時々、ふとした瞬間に空耳で猫の鳴き声が聞こえてきて、そのたびに自嘲気味に
苦笑を漏らす。そのあと決まってにじんでくる涙には、しばしの間手を焼かされた。


同人イベントも無事終わり、期末試験の準備も終わってもう少しで夏休み、というある日、
小春は校内のカフェテリアで一息ついていた。

次の小説の構想をぼんやりと考えていたので、傍に立つ気配に気づくのが遅れた。
突然目の前に数枚の写真がばさりと落ちてきて、まるでマンガのようにびくっと身体が揺れてしまった。

見ると、かつての愛猫たちが写っているではないか。
横には狂司郎が無表情のまま立っており、小春と目が合うと
「湊が持っていってやれって言うから。」
とぼそっと呟いた。
猫たちは写真のなかで、ソファで寝転んだり、芝生の上で空を見上げていたり、
二匹くっつきあって眠ったりしている。
二匹がじっとこちらを見つめている写真を見て、小春は猫たちが新しい家で、幸せに暮らしていると確信した。
カメラに向けられた二匹の視線はリラックスしており、撮影者を信頼していることがありありとうかがえる。
瞳も澄んでいるし、毛並みもよさそうだ。

よかった・・・。

「英くん、ほんとうにありがとうね。」
立ち上がって頭を下げる小春を見下ろしていた狂司郎は、なぜかふいと顔をそらした。
横を向いたまま
「ライがあんま食わないんだ。」
と独り言のように呟く。
その言葉を聞いた小春はすかさず、
「あのね、ライは暑くなってくると食欲が落ちちゃうのよね。そういうときはね・・・」
と、ここぞとばかりに猫飼いとしての先輩風を吹かせるのであった。

 

The END

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