Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪115.荊-木犀は月に馨る- 4-2


見渡すほどの広さもない部屋の片隅に、狂司郎は、いた。
ベッド横に畳まれている布団の上に、片膝を立てた状態で腰を下ろしている。
ベランダに面した掃き出し窓の硝子に上半身を持たせかける姿勢で、ぼんやりと外を見ているようだった。
顎を上げるようにして見上げている視線は、空に向かっているのだろうか。
雪耶が部屋に来たことに気づいているのかいないのか、狂司郎は微動だにしない。

雨雲が垂れ込めた鈍色の空の影響でどんよりとグレーがかった夕闇色の室内は、絶え間なく街を打つ雨音と湿気を含んだ重い空気によって、昏い水底のように感じる。
そして、狂司郎までもがその一部と化しているように見えてしまう。


陰鬱な空気を振り払おうと、雪耶の視線が照明のスイッチを探す。
見当をつけた壁にそれを見つけた雪耶が手を伸ばすのとほぼ同時に、「点けるな!」という狂司郎の掠れた声が響く。

しかし、雪耶の指先の方が一瞬早くスイッチを押してしまっていた。

蛍光灯が部屋の中を明るく照らす。
忌々しげに舌打ちした狂司郎は、眩しそうに目を眇めた。
その表情は不機嫌そのものだったが、雪耶は怯むことなく静かに歩み寄る。

手にしていたプリンの袋を近くのローテーブルの上にそっと置いた後、狂司郎が座る布団に膝を寄せて正座した。

「狂さん、俺、ちゃんと話がしたいんだ」
雪耶は狂司郎を刺激しないように、落ち着いて声を出すことを心がけた。
それは、自分の感情を揺らさないためでもあった。

「…俺は話すことなんてねぇ」
「うん。それはさっき聞いた。
でも、俺が話したいんだよ。このままじゃ嫌なんだ」
「知るかっ、帰れっ」
雪耶は、視線もくれないまま言葉を吐き捨てる狂司郎の冷たい横顔を、じっと見つめる。

「帰らない。
狂さんとちゃんと話をするまで、俺は帰らない。
狂さん、こっちを見て」
「………」

狂司郎から返ってくるのは、無言の拒絶だけだ。
その拒絶からは、張り詰めたような狂司郎の感情が伝わってくる。
その感情が弾けてしまうのが怖い。

「帰らない」と言い張る雪耶をこの部屋に置いて狂司郎が出て行ってしまう気がした雪耶は、思わず手を伸ばし狂司郎のシャツの裾を握り締めてしまった。
柔らかくしっとりと馴染んでくる感触の布地は、シルクだろうか。
高価そうなシャツは強く握ったら皺になってしまいそうだったが、指先に篭る力を抑えることはできない。

狂司郎が振り払おうと思えば、いとも簡単になしえてしまう程度の無意味な牽制だが、わずかでも彼の心理的なストッパーにしたかった。



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