Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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◆勝利の味はKISSの味? vol.3◆

 一点、また一点と相手ゴールを攻め続けて、後半戦も残りあと30秒。
3-0でこのまま逃げ切れば、桜華の勝ちだ。
今は千田工業高校の攻め。
桜華のフィールドへ向かう相手のドリブルを横合いから桜華選手が掠め取り、雪耶へとパスが続く。
相手MFのスパイクが、雪耶目掛けてスライディングしてくるのを見て、嵐が声を張る。


「ゆっきー!跳べっ!」


 目線で答えた雪耶は、ボールを蹴り上げて、自らも跳びあがる。
だが、空中に跳んでは、雪耶目掛けて蹴りあがったスパイクをかわすことが出来ない。
フィールド上の仲間や観客席のみんなが、危ないっ! と思った瞬間。
空手の回し蹴りさながらの動きで、雪耶のスパイクが相手のスパイクの足裏をがっちりと塞き、浮力を補っていた片足は、見事にボールを捕らえて再度軽く蹴り上げた。
それ目掛けて今度は嵐が縺れた二人の上を跳び越える。
ボールを蹴り上げた雪耶の足裏を踏み台にして、高く上がったボールに追いつき、今度はそれを地面に向けて蹴り降ろす。


「あっ!黒嵐(ブラックストーム)だ!」


観客席の楓が、興奮気味に叫んだ。
周りに居た桜華の応援者が一斉に楓に振り向く。
二人の従兄弟の彰が、面食らったような顔で聞き返した。

「ブラッ…?何だ?それ」
「黒嵐!嵐はボールに変な回転掛けて蹴るのが得意なんだよ。」
「回転!?」
「特にあの上から蹴り下ろすボールには勢いと一緒にいやらしいくらい回転が掛かってて!」
「ほぉ~!」
「それを蹴ったら、変な方向にボールが飛んでくの!嵐の得意技!」
「変な方向?」
「うん!何処に飛んいくかわかんないんだ!」
「……それって」


 詰めの甘い嵐らしい技だ…と、周りに居た誰もが溜息をついた。
願わくば…桜華のチャンスになる方向に飛んでくれ!と、誰もが心の中で神に祈る。

 地上に落とされた黒い嵐は、その場で一瞬止まったように見えた。
それを目掛けて相手側の選手がボールを捕らえて蹴り上げる。
グラウンドにいる全員が息を呑んだ。
シーンと静まり返ったフィールドに、ホイッスルの高い音色が響く。


『オウンゴール!』


 相手側の選手が蹴ったボールは、蹴り上げた方向とは真逆の、味方ゴールに吸い込まれた。
自殺点を喰らった相手チームは呆然と立ち尽くしている。
 雪耶目掛けてスライディングしてきた相手は、雪耶に喧嘩を吹っかけて、嵐の肘に怪我をさせたヤツらと試合前に話していた選手だった。
嵐のボールを蹴ってオウンゴールを決めた相手は、雪耶に肘鉄を喰らわせた張本人だ。

嵐と雪耶はお互いの敵を目の前に、指を突きつけて言い放つ。


「よくも汚い手を使って試合に臨んでくれたよなっ! 正々堂々と戦えねーテメーらに、桜華が負けるわけがねーんだよ!思い知れっ!」


 試合終了のホイッスルと共に、フィールドと観客席から盛大な歓声が湧き上がる。
桜華学園サッカー部一年生の初の交流試合は、4-0の白星で飾られた。



 試合終了後、サッカー部のみんなに揉みくちゃにされながら、選手控え室に帰ってきた嵐と雪耶は他の選手に遅れてシャワーを浴び、誰も居なくなったロッカールームで着替えていた。
 普段サッカーなどしない雪耶は、フィールドを走り回ってクタクタになっていた。
おまけに、今までに経験が無いほどの人数から揉みくちゃにされたお陰で気疲れしてしまって、油断すると今にも上下の瞼がくっ付きそうな感じだ。

 トロトロと着替えている雪耶の額の傷に、嵐がそっと手を伸ばす。
それに気付いて雪耶が顔を上げた。


「…何?」
「ごめんな。ゆっきーに怪我させた…」
「…お前のせいじゃないじゃん」
「でもさ…試合に出させたのは俺だし」
「お前を喧嘩に巻き込んだのは俺だ」
「それ、ゆっきーのせいじゃないじゃん」


 ふと、お互いの瞳が逢う。
少し見下ろす、日焼けした髪と同じ鳶色の瞳。
反対に少し見上げる、明るい琥珀色の瞳。

 ずっと一緒に居れたらいいのに…

お互いに想いながらも、相手には言えない言葉が甦る。

なんだろうか。
この気持ち。
俺たちは「友達」だけど。
喧嘩ばっかりの毎日だけど。

こいつの居ない自分が想像出来ない。

だって
自分の気持ちよりも、相手の事のほうが手に取るように解るから。


「…ゆっきー」


見詰め合ったまま、嵐の顔がゆっくりと雪耶に寄っていく。
肩に手を置いて、こつんとおでこを合わせて瞳を閉じた。


「俺、頑張ったご褒美が欲しい…」
「はぁ?」
「今回だけ…怪我をおして頑張ったしさ」
「何が…欲しいんだよ?」


嵐は閉じていた瞳を開く。

間近で見る雪耶の瞳は、甘い色の宝石みたい。
色白で女の子みたいにコロコロと変わる表情。
自分にだけ見せてくれるその表情が可愛くて好き。
そういうと殴られるから言わないけど。

でも今は…眠そうで隙だらけ。


「勝利の…美酒?」
「…? 勝利の…何?」


嵐のおねだりに
都合よく小首を傾げた雪耶の唇まであと数センチ…。
というところで、いきなりロッカールームのドアが大きな音を立てて開いた。
雪耶の身体がびくんっと震えたのと同時に、嵐の顔ががばっと離れる。


「雪っ!! 怪我大丈夫かっ!?」
「雪っ!! 俺に怪我見せて!ちゃんと手当てしたの!?」


 選手の控え室があるところへはなかなか入れてもらえなかった観客席のメンバーがドヤドヤと、今更のようにロッカールームに入ってきた。
当然の如く雪耶の二人の兄は嵐から彼を奪い取って、ブラコン振りを発揮している。

 嵐の口から、大きな溜息が漏れた。
それを聞きとがめた彰が彼を気遣う。


「どうした?嵐、今回は流石に疲れたか?」
「彰兄…、いや、平気だけど」
「…だけど?」
「どうやら、勝利の美酒は味わい損ねたようですね。一之瀬嵐」
「何?嵐、美酒がなんだって?」
「ぎゃーっ!! な…寮長!?」


なんで!?
なんで寮長解ったの!?
つか、何で知ってんの!?

 ニヤつく寮長に焦る嵐を横目に、狂司郎がふっと笑った。
そのまま目線を雪耶に移してからロッカールームを後にする狂司郎の隣に、彰が静かに並ぶ。
廊下で待っていた数人の桜華の生徒が、少し離れてその後をついて行く。


「面倒くせぇ…ついてくんな」
「まぁそういうなよ。俺も、あいつ等も、きっと虫の居所が悪いんだ」


 これから、二回戦突入だ。
後輩を可愛がってくれたお礼と、桜華を舐めたやり方にたっぷりお返ししないとな…。
廊下を去っていく無言の背中達がそう語っていた。

 千田工業高校の番張り連中が、何処かの誰かにボロカスに伸されたという噂が流れるのは、それから数日後のことである。

 自分たちの知らないところで、そんなことになっているとは想像もしていない嵐と雪耶は、帰りのバスの一番後ろの席で凭れ合って爆睡中だ。
 夢でも見ているのか、嵐の口からとんでもない寝言を聞いたのは、何故か隣に陣取っている寮長、ただ一人だった。


「…ゆっきーに…キスくらいさせろよ……バカヤロウ供…むにゃむにゃ……Zzzzz」


 寮長の瞳がキラリと光った。
寝言が示すとおり、勝利の美酒どころか、嵐と雪耶の関係は前途多難な様相を呈していた。


勝利の味はKISSの味?―END―

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