Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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◆勝利の味はKISSの味?vol.1◆



「だからさっ! この通りっ!」


 日に焼けて赤茶けた髪を降り下げて、一ノ瀬嵐は、上目遣いに目の前に立つ友人を見詰めた。
見た目だけは、どちらかというと可愛い顔をした久世雪耶が、うんざりした表情で嵐のことを見詰め返している。
誰も居なくなったサッカー部の部室で、嵐は雪耶に折り入ってのお願いをしている最中だ。


「…やめろよ、嵐、そういうの似合わねーから」
「ゆっきーだから、こうして頼んでんのっ!お願いっ!」


 サッカー部の嵐は、スポーツ選手らしく、いい感じに日焼けした人懐っこい顔を、ちょっと情けなさそうに歪ませながら、両手を合わせてまた頼み込む。
 スポーツ特待生として桜華学園に入学した一之瀬嵐は、身長も169cmと成長盛りの伸び盛り。
見た目は細身の身体も、流石に毎日鍛えているだけあってしっかりと筋肉もついていて、明るい性格に屈託の無いその笑顔のお陰で、先輩や同級生にも友人が多く、彼の周りは何時も賑やかで楽しげだ。
男子校である学園を一歩出れば、他校の女の子が待ち伏せしていたりする人気者。


 そんな嵐は…
クラスも違うし帰宅部の、見た目とは違ってヤンチャで喧嘩っ早く、家柄では不穏な噂が絶えなくて、同じクラスの人間でさえちょっと付き合いを遠慮したいと思うような久世雪耶と、何故か何時も一緒に居る。
性格も雰囲気も違うのに、なんで何時も一緒なのかと、周りが不思議がるくらいだ。
そんなことを気にしていないのは、当の本人くらいなものである。
何時も一緒の雪耶でさえ、どうしてそんな人気者が自分に懐いているのか不思議に思っている。


「今度の一年生だけで行われる交流試合、ゆっきーの力が必要なんだよ!」
「…なんで俺なんだよっ!?」
「これの責任もあるじゃん?」
「なんで、それが俺の責任なんだよっ!! 勝手に止めに入ったくせにっ!」
「いやぁ…つい?」
「ついじゃねーっ! 俺だけなら勝てた喧嘩だったのにっ!!!」


 サッカー部一年生の中では、抜きん出てその才能と実力を発揮している嵐の左腕には、痛々しい白い三角巾が巻かれている。
 二日前、ひょんなことから雪耶の喧嘩に巻き込まれた(というか自ら巻き込まれた)せいで、左腕を捻って肘を痛めたためだ。
サッカーは足技が目立つ為に忘れられがちだが、意外と格闘技のようにハードな肉弾戦。
2週間後に控えた一年生だけで行われる千田工業高校との交流試合に、悔しいけれどこの腕では出場出来そうもない。


「それに俺、サッカーのルールなんて詳しく知らねーし、チームプレイって面倒で嫌だし…」


 雪耶の表情が、少し申し訳なさそうな困った顔になる。
嵐は、雪耶が他の人間にそんな表情を見せたりしないことを充分に知っていた。


 桜華学園の高等部になってから出逢った雪耶は、どんなに笑いかけても、構っても、最初は借りてきた猫みたいにむすっとして、迷惑気な顔をしているだけだった。
少しは自分と居る事に慣れてきて、バカ騒ぎやふざけ合いや悪戯を平気でしているけれど、今だって周りに人が居るときには、こんな表情を見せたりしない。

 自分にしか見せてくれない表情がある。

嵐にはそれが妙に特別な感じで嬉しかった。
今までだって友達は沢山居た。
今だってちゃんといる。

 でも…

自分から寄っていかなくても、自然と友達が集まってくるのに…
大抵一人で居るからというのもあるけれど、何故か雪耶だけは自分が追っかけていた。
雪耶が自分にだけ見せる表情があると気付いたとき、こいつと一緒に居てよかったと思えた。
傍に居ることが当たり前になるくらい、気になるヤツ。

 へんなの。

と、思うけど。
居ないことが不思議。
喧嘩ばっかりしているけど、それも当たり前。
自分の表情や態度で、雪耶のそれが変化するのが楽しい。
他人と一緒に居る事が、こんなに自然と思えるのは初めてかも…と思う。

 もう一押しだな。

と、嵐は改めて雪耶におねだりするみたいに、上目遣いで手を合わせる。


「2週間、俺が雪耶に付きっ切りでサッカー教えるから!他のヤツには文句言わせねーから!」
「……2週間も…面倒」
「ねっ!ゆっきー!頼むよ!お願いっ!」
「……」
「嵐の男としてのお願いだよ」


雪耶の口から、仕方なげな溜息が漏れた。
嵐の「もう一押し」は確信に変わる。


「流石ゆっきーっ! ありがとう!すっげ嬉しいよっ!」
「まだ何も言ってねーしっ!」
「でも男のお願い、ゆっきーなら聞いてくれるもん!」
「…華道と空手の時間だけは、絶対譲らねーからなっ」


嵐は、そんなの当然! と、頷きながら満面の笑みで雪耶を見詰めた。
雪耶が「うっ…」と小さく呻きながら、困ったようにそっぽを向く。
素直じゃない親友を前に、嵐は思う。

なんかかわいー。

そんな台詞一言でも口にしたら、雪耶にボコボコにされるから言わないけど。
だから…


「雪耶、サンキュー」
「…っ!ちょっ…」


自分より少し背が低くて、自分より少し細い身体をギュっと抱きしめてお礼を言う。
ちょっと過激なスキンシップも何時ものこと。
そして…


「そんな台詞、試合に勝ってから言えよっ!」
「…って!」


雪耶がごつん! と、嵐の頭を小突く。
これも何時ものこと。
二人で居る事が、ごくごく自然な当たり前のこと。
これからも、ずっとこんなに楽しく二人でやっていければいいな…
と、嵐は思う。

いつか大人になって
お互いの向かう道が違っても

いつまでも一緒に居れたらいい。

お互いがいつも支えになれる関係だったらいい。
そんな嵐の、珍しく真面目な想いを他所に、2週間はあっという間に過ぎていく。

 

 to be continued ―

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