Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

黒龍は木犀を甘く喰む7

 「雪耶さん……」

 雪耶と出逢ってから10年が過ぎた。
 身の内に抱えるトラウマと、九頭竜直系の孫として彼に圧し掛かる重圧に、未だ小さなその身体で雪耶はよく耐えている……と瀬名は思う。
 雪耶のトラウマを知ったあの日から……いや、雪耶と出逢った日から、瀬名は一度も雪耶の泣き顔を見た事が無い。
 雪耶を襲った過去の出来事は、あまりにも痛烈に雪耶の心を抉り、そのために家族や周りの大人に悲しい顔をさせないよう、決して泣いたりしないと決意させるまでに至ったのだ。
 あれから日を待たずして正式に九頭竜の下に就いた瀬名は、自分の持てる全てを雪耶に捧げようと決めた。
 肉体や精神の鍛錬と護身術を兼ねて、自分が小さな頃から続けていた空手を教え、大学にまで通って得た知識を与え、一度は捨てようとした自分の命を懸けて雪耶を守ると胸の内で誓った。

「……瀬名さん……俺、どうしたらいい?」

 小さく呟く雪耶の迷いに、瀬名は胸を切なくする。
 今、彼が自分に問うているのは、喧嘩してしまった友人とどう仲直りすればいいかということではない。
 彼が大切に思う人々を、その身に抱える苦悩で傷つけてしまう自身は、どう生きていくべきなのかを迷っている。

 何時か失うかもしれない恐怖と闘いながら、今の環境に甘んじて生きていてもいいのか。
 紡いできた縁を断ち切ってでも、今とはかけ離れた世界で生きるべきなのか。

 それは、雪耶自身にしか決めることは出来ない。
 だが、瀬名はどんな生き方を雪耶が選んでも、自分は絶対に彼から離れようとは思わない。
 たとえ生きる世界が違う人生を彼が選んだとしても、自分は死の間際まで、日陰の道に身を置いた場所から彼を守り抜こうと決めている。

「今はまだ迷っていればいいんです、急ぐ事はない」
「でも……また」
「英さんには明日、過去の真実を伝えて謝ればいい。彼ならきっと理解して許してくれます」
「……そう、思う?」

 自分の胸に凭れながら小首を傾げ、縋るような瞳を向ける雪耶を、瀬名は思わず強く抱きしめた。
 「はい」と答えつつ、心の奥に暗い炎が燈るのを感じる。

 全てを失って、泣きながら自分に縋ってこい。
 その心も身体も、何もかもを守ってやれるのは自分だけだと思い知ればいい。

 そんな想いが心を掠める自分に、瀬名は苦笑する。
 その情念が彼への同情からくるのか、父性的な愛からくるのか、もっと違うものなのか、瀬名にも解らない。
 ただ、自分の腕の中で小さく震える仔猫のような雪耶の存在が、今の自分の全てであるということだけは明確な事実だ。

「ここに長居していても仕方ない。帰りましょう、雪耶さん」 

 ゆっくりと雪耶から腕を解いて、その顔を覗き込む。
 小さく首を縦に振った雪耶と共に、近くに止めたバイクへと向かう。
 ヘルメットを被りバイクの後ろに跨った雪耶が、瀬名の背に身を寄せながらそっと囁いた。

「瀬名さん……ありがとう」

 腰に回された雪耶の手を軽く叩き、「解っています」と合図して、瀬名は英邸の前から静かにバイクを発進させた。


【黒龍は木犀を甘く喰む】THE END 


テキスト by 辰城百夏

Copyright (C)   ciliegio2011, All rights reserved.


↓ランキングに参加しています。↓よかったらポチしてください。
 にほんブログ村 小説ブログ BL小説へにほんブログ村  にほんブログ村 イラストブログ BLイラストへにほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト

|  ・雪耶ライン | 00:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://moelvabxb.blog81.fc2.com/tb.php/277-186b641a

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。