Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪4.―好物は先に喰え―

  私立桜華学園の敷地内には桜華生用のカフェがある。

 二階建ての洒落た建物で校舎からはもちろん、寮からも渡り廊下で行くことが出来るようになっている。

 内装はシンプルで清潔感のある落ち着いた印象だ。窓も大きく日当たりが良いので雰囲気も明るい。
 食事を取るスペースは1階2階の両フロアーにあり、建物の校庭に面したところはオープンカフェになっている。
 天気のいい日にはそこで食事をする生徒も多い。


 桜華学園ではここでランチを食べる生徒が過半数を超える。値段は500円と特別安くはないのだが、中高一貫男子校の育ち盛りの生徒達が満足できる量なので、決して高すぎるということはないのである。
 桜華に通うのは金持ちのお坊ちゃまたちばかりなので、金額に対する不満が出ないというのもあるのだが。
 このカフェにはレアメニューというものが存在する。カフェの管理責任者でもある桜華寮寮長の水谷海翔が気まぐれに作るバナナプリン200円がそれだ。

 香料など使用せずバナナ本来の香りと甘みを生かし、プリンにしたヘルシーで美味しいデザートである。作るのは彼の気分次第なので、いつメニューに上がるかが読めない。
 しかも限定50個という少数なので、偶然その日の早い時間にカフェに行ったものしか食べることが出来ないというわけだ。
 ただし、レアメニューにありつきたくて、授業を抜け出して行こうものなら、寮長の厳しい仕置きが待っているので誰もそれを実行する者はいない。



 昼休み、おなかをすかせた桜華生たちがカフェに続々とやってくる。


「あ!いたいた~!」
 カフェに入った雪耶は、一人昼食をとろうとしていた狂司郎を見つけて声をあげ、そちらに向かう。
 手にしていた日替わりランチの乗ったトレーを、テーブルに置いてから静かに椅子に座る。
「狂さんのところに来れば絶対座れるから安心だ!」

 狂司郎のテーブルには、誰も近寄ろうとはしない。
 他にどこにも空きがない時でもない限り、狂司郎専用テーブルになってしまう。
 どうやら他の生徒にとって、その表情だけで人を威嚇しているような狂司郎と一緒に昼食をとるのは息が詰まるらしい。


 ふとテーブルに目をやった雪耶が声をあげる。
「ああっ!狂さんそれっ!バナナプリンじゃないですかっ!
今日、メニューに出てたんだぁ。くそーっ!もっと早く来ればよかった。
狂さんどんだけ早くに来たんですか!」

「…今来たとこだ」
 早口でまくし立てる雪耶をチラリと見た狂司郎が ボソリと答える。

「ええっ?なのになんでバナナプリンゲットできたんです?」
「寮長にもらった。…あいつの弱みを握ってるからな」

 寮長の弱みという魅力的な言葉を聞いた雪耶は、声を低くして狂司郎に尋ねた。
「え?寮長の弱み?いったいどんな?」
「………」
 だが、教える気がないのか無視されてしまった。

「ちぇっ。狂さんのケチ!
…でも、いいもんね!バナナプリンがなくたって、
今日のランチは俺の大好きな鶏のから揚げだもん!」
 と自分の皿を嬉しそうに眺めながら、雪耶は胸の前で両手を合わせる。
「いただきます!」

 小さい頃から食事のマナーを厳しく躾けられた雪耶は行儀が良い。
 そんな雪耶を見た狂司郎の表情が少し柔らかくなった。


 狂司郎が食べているのはキノコのパスタだ。左手のフォークで器用にスパゲティを食べている。

「あれ?狂さん左利きでしたっけ?」
「両方使える。」
「わあ!狂さん、両刀遣いなんですね!カッコイイ!」
「ぐふっ!」
 雪耶の言葉を聞いた狂司郎は思わずむせそうになっている。
「狂さん?どうしたの?大丈夫?」
 
 気遣う雪耶の顔を狂司郎がまじまじと見つめてくる。

「お前、俺に向かってその言葉を言うか」
「ん?なんで?両手使えてかっこいいって言っちゃダメ?」
 雪耶は、両刀遣いという言葉に対する狂司郎の反応がいまいちよくわからなかった。
両手が使えたら便利だろうと思って言っただけなのだが、もしかしたら、
両刀遣いには別の意味でもあるのだろうかと雪耶は小首をかしげる。

フッと小さなため息をついた狂司郎は、雪耶から視線を外すと無言でパスタを巻き取った。

「???ヘンな狂さん。
でも、どやったら両手使えるようになるんです?」

その問いに狂司郎の食事の手が止る。

「……ガキの頃、怪我で右手が使えねぇ時期があったからな」
 狂司郎の顔つきに不機嫌な色が浮かんだような気がして、雪耶は話題を変えてみる。

「狂さん、キノコのパスタ美味しいですよね。
俺、日替わりがから揚げじゃなかったら、それ食べようと思ってた。
キノコって香りとか歯ごたえとか好きなんだけど、やっぱ狂さんも?」

 雪耶をじっと見つめる狂司郎の返事は…。
「………形。」

予想外の狂司郎の言葉に雪耶はすぐには反応できない。

(へ?形って?・・・何?どういう意味?キノコの形が好きってこと?…。形…って?
うっ!狂さん、その答えの意図は何?ひょっとしてジョークなの?
って狂さんが冗談言うって今までないよ?他に何か意味があるの?
わ、わからない!これって笑うべき?ツッコむべき?)

 雪耶の頭の中がフル回転で稼動するが、答えがわからない。
 焦って何か言おうと思うものの、言葉も出てこない。
 そのまま狂司郎から目を逸らし、うつむき加減でご飯を口に運ぶ。

(あぁぁ…狂さんが見てる。視線が痛いよ。どうしよう。
く、空気が冷たい…ここ北極より寒いかも。)

 すると目の前の自分のランチの皿に、炒めた千切りピーマンが飛び込んでくる。
狂司郎だ。自分のパスタに入っているピーマンを、雪耶の皿に放り込んでいる。
さっきの狂司郎の言葉を、雪耶が無視したことになってしまったので、その仕返しだろう。

「狂さんー!何やってんですか!ピーマン食べなきゃダメですよ!栄養あるんだから!
好き嫌い言ってると大きくなれませんよ」

「俺はいい。身長伸ばしたいのはおまえだろ」

 痛いところを衝かれた雪耶の身長は165cm。確かにもっと高くなりたい。
だけど、ここで言い負かされるのは癪に障る雪耶が言い返す。
「狂さんだって179cmでしょ。あと1cm伸びたら180cmですよ!179と180じゃ響きが違いますって!
だから好き嫌い言ってちゃダメなんです!」


 狂司郎の瞳がギラリと光った…ような気がした。


(し、しまった!ひょっとして狂さんが気にしてることだったのか?)

「俺はピーマンが食えねぇんじゃねぇ。キノコのパスタに入ってるのが許せねぇだけだ」
 そう言ったかと思うと突然、狂司郎のフォークが雪耶の皿にある、最後の1個のから揚げを刺す。
そのまま狂司郎は雪耶のから揚げを食べてしまった。

「ああーーーーーっ!!最後に食べようと思って取っといたのに!
狂さんひどいっ!うわーーーーーん!!」
 雪耶が悲壮な声で叫ぶ。

 すると、
「お前、バッカだなぁ。好きなもんはさっさと食べないから取られちまうんだよ」
 と背後から声がする。
振り返ると1年の一之瀬嵐が笑っている。サッカー部で頑張る元気少年だ。

「俺はっ!俺は最後に一番好きなものを、じっくり味わって食べたいんだよっ!」
 ムキになって雪耶が言い返す。
「まぁまぁ。食べられちゃったもんはしょうがない。諦めろよ」
 雪耶の背後からその肩に手を回した嵐が慰める。

「…くっ!」
 好物を狂司郎に食べられてしまったショックと、たかがから揚げ1個でわめいてた自分を嵐に見られたことが、
恥ずかしいやら悔しいやらで雪耶はうつむいて唇を噛む。


 そのやりとりを、気に留めるでもなく食事を終えた狂司郎が自分のトレーを持って立ち上がった。
 彼は席を離れる間際、雪耶の目の前にバナナプリンを置いた。

「え?狂さん?」
 雪耶が狂司郎を見上げるが、狂司郎はこちらを見ることなく出口に向かってしまう。

「ああっ!バナナプリン!」
 大きな声を上げた嵐がバナナプリンに手を伸ばした。

 その声にすかさず反応した雪耶は、嵐の手が届く前にバナナプリンを掴む。
「やらないっ!これは狂さんが俺にくれたんだ!」
「ちぇーっ!俺もバナナプリン食いたい。なんで狂さんはお前に甘いんだよぉ」

「へへっ!」
 雪耶は照れくさそうに笑う。

「あ、お礼言ってなかった!」
 慌てて立ち上がり出口を見ると、カフェを出て行こうとする狂司郎の姿があった。
 離れていく狂司郎の後姿に「狂さんっ!ありがとうっ!」大きな声で雪耶が叫ぶが、
彼は振り返ることなくそのまま出て行ってしまった。

「聞こえなかったみたいだな。」
嵐がポツリと言った。


――ううん。狂さんには聞こえてる。
だって髪の毛が揺れた。きっと、こっちを見てくれたんだよ――

嬉しい気持ちが雪耶の胸に広がる。

いつのまにか、から揚げを食べられてしまった悔しさは消えていた。
でも、まだちょっと悲しいけれど…。


-END-

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