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Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪42.時の流れる電車に乗って 9

 同じクラスになる誰もが雪耶の抱える背景を恐れ、蔑み、近寄る事は無かったし、それらを咎める教師も当然居なかった。
 それどころか、教師自らが敬遠していたくらいだ。
 雪耶自身も周りに構われる事を嫌って、自分から彼らに話しかけることも無ければ、能面のように固めた表情を崩すことも一切なかった。

 そんな9年間を過ごした雪耶が、中学をあと少しで卒業出来る…という時に、その事件は起きた。

 事件についての経緯は、当事者である相手の少年と雪耶にしか解らない。
 だが、そのどちらもが本当のことを言わなかった。
 一人は病院の一室で、口を固く閉ざしたまま、自分の起こした事を今更ながらに悔いていたし、もう一人は、頭に血が上ると自分がどれほど見境無く相手を傷つけられる人間になれるのかを知って、事件そのものを自分のせいだと言い張ったからだ。
 私立学校というのは、学内外のスキャンダルを大いに恐れる。
 学校側は、卒業までの数ヶ月を休学する代わりに、雪耶の在学と卒業を容認させてくれと懇願してきた。
 雪耶に詳細は教えられなかったが、裏で祖父達が動いた事は言われなくても解っている。
 事件の真相もちゃんと手中に収めた上で、学校側と話をつけたに違いない。
 雪耶は中学へはそのまま通うことなく、卒業式にも出席することなく、桜華学園の高等部へ編入するための入試を受け、今に至る。
 桜華に通う学友は、その頃の雪耶のことを全くと言っていいほど想像出来ないだろう。
 再び、耳障りな元同級生たちの声が聞えてきた。

「あの時の久世、怖かったよなー」
「さすが、ヤクザの血を引くだけあるよな」
「あんなやつと、同じ高校じゃなくて良かった~」

 雪耶は、真相を知らない彼らの言葉を耳にしながら、くだらねー…と無表情で流れる風景を見ていたが、向こうで息を呑むような雰囲気が起こり何気なく顔を向けると、明らかに恐れを生したようにこちらを伺いながら隣の車両へと移動する彼らが見えた。
 その行動を訝しく思った雪耶が顔を上げると、狂司郎の目線が鋭く彼らに突き刺さっているのに気付く。
 もう一度、去り行くグループを見ようと思ったら、今度は川田が相手側の視線を遮るように間に移動してきて吊革に掴まったので、雪耶からも彼らの姿が見えなくなってしまった。


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