Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪2. 銀河の果てで戯れて

0810kyoushirou-S.jpg 

 私立桜華学園高校――
午後の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り終わった。

 3年生の校舎にあるバルコニーには先ほどまで、昼休みを思い思いに過ごす生徒達の姿が見受けられたが、今は静まり返っている。
 穏やかな日差しが注がれているその場所に、一人佇む長身の人影があった。


 明るい陽光にキラキラと反射するような白に近い銀色の長い髪。後ろでひとつに束ねられたその絹糸のような髪を風がサラサラと揺らしていく。
 男子にしてはきめの細かい滑らかな色白の肌。
 長い睫毛に縁取られた少しつり上がり気味の大きな目。視線の鋭さと相まって意志の強さを感じさせる。金色に近いような薄い色の瞳には日差しが眩しすぎるのか、時折目を眇めている。
 閉じられた薄い唇からはチュッパチャップスの棒が覗く。最近彼が気に入ってよく買っているオレンジ味だ。

 彼の名は英狂司郎。
 桜華学園高校の3年生だ。中学からこの桜華学園に通っている。
 最近は彼も落ち着いた学校生活を送っているが、昔はかなり荒れていて暴力事件や家出など数々の問題を起こしていた。
 警察沙汰になったものもあり、上流家庭の子息ばかりが通う桜華学園にとっては前代未聞の問題児でもあった。
 その彼が退学にもならず通い続けていられるのは、半導体を扱うエレクトロニクス総合商社を経営している父親の財力によるものだと噂されている。

 狂司郎にはもう一つの呼び名がある。それは『桜華の白豹』
 もともとは狂司郎とやりあった他校の生徒が陰口としてつけたものだった。その名が彼の容姿と合っていたことから桜華の生徒にも広まっていた。
 狂司郎は人とつるむことをせず単独行動が多いのだが、喧嘩を仕掛けられると多人数相手でも動じることなく向かっていった。
 そういう時の狂司郎の人を射すくめるような視線と、素早くしなやかな身のこなしに、気の荒い肉食獣のイメージを重ねたのだろう。
 もっとも狂司郎に向かってその名を呼ぶのはかなりの勇気と覚悟がいることだが。



 午後の授業が始まっているため、校舎には生徒達のざわめきもない。
聞こえてくるのは体育の授業の笛の音くらいで静かに時が過ぎていく。

 その静かな陽だまりの中、狂司郎はいまだ動こうとはしない。
バルコニーの手すりに軽く背を預けながら、口の中の飴玉を舌先で転がしていた。

 狂司郎にとって一人でいることは苦痛ではない。 いや、むしろ一人でいるほうが気楽だった。
 幼い頃に家庭の中で孤立し、自分を守るのは自分しかいなかったという過去のトラウマなのか、人と関わることが苦手で、素の自分を見せることを恐れていた。
 狂司郎を理解するほんの一握りの人たちを除いては・・・。



「狂さん!」
一人きりの時間を楽しんでいた狂司郎の耳に明るい声が届く。
高校生の男子にしては少しキーの高い澄んだ声。

yukiya-S.jpg 

 1年の久世雪耶だ。

 色素の薄い髪と瞳、小柄で可愛らしい外見に似ず少々やんちゃな言動が、入学当初から人目を引く存在だった。
 同級生と楽しげにじゃれあっていたかと思うと、何があったのかいきなり噛み付くような勢いで立ち向かっていく。
 そんな雪耶を、狂司郎も幾度か見かけたことがある。

 雪耶に関する噂も狂司郎の耳に届いていた。
それは家庭環境に関するものだったが、狂司郎にとってはとりたてて気になることではなかった。
『家庭は関係ない。自分は自分だ 』 という考え方が狂司郎自身を支えているものだったから。

  その時々の感情をそのまま行動にうつすことが出来る雪耶。
どんな家柄であれ、全てを受け入れ広く包み込むような愛情の中で育ったのだろう。
―――幸せなやつだ―――そんな少し皮肉めいた気持ちをも持っていた狂司郎だった。

家庭の中で自分の感情を押し殺すようにして育った狂司郎は、そんな雪耶に対して気づかぬうちに羨望のようなものを感じていたのかもしれない。

 だが、花壇での雪耶を見て以来、その印象が変わった。
花を切りあぐねている雪耶の表情に、こんな顔をすることもあるのかと少々驚いたのだ。
 思わず雪耶の代わりに花を手折ってしまった自分にも戸惑ったのだが。

 あの花壇の一件以来、雪耶が声をかけてくるようになった。

 自分の周りに壁を張り巡らし、人を寄せ付けない狂司郎だが、不思議なことに雪耶はその壁をぶち破るでもなくすんなりと入り込んでくる。
 入り込まれてもそれを不快に感じていない自分に気づいた時、自分のことながら不可解な気持ちになった狂司郎だった。

 自分の家庭に対する周りの偏見を感じる雪耶にとっても、
それを気にしない狂司郎との関わりは居心地のいいものなのかもしれない。


 そんな雪耶の瞳を時折掠める暗い影がある。
それを初めて見た時、狂司郎の心はざわついた。自分の奥深くに眠る記憶の欠片を揺さぶられた気がしたのだ。

どこかでこの瞳を見た。

 誰だったのか、何故それが記憶に残っているのか・・・思い出せない。
ただ、雪耶の瞳に時折宿る翳りを見るたびに、その瞳だけが記憶の中で蘇る。

 その瞳の暗い影は、彼がただ甘やかされて育っただけの坊ちゃんではないと狂司郎に思わせた。
 そしてそれは狂司郎と雪耶を一歩近づける要因にもなっていた。



 「狂さん、屋上行かないッスか?」ニコニコと雪耶が誘う。

(1年坊主が3年誘ってサボりかよ。)
狂司郎は心の中で苦笑しつつ無言で雪耶を見つめる。

 返事がないのを気にするでもなく、雪耶がまた話し出す。
 「狂さん、またチュッパチャップス舐めてる・・・虫歯になりますよ!」

 「……」
返事をしないまま雪耶を見ている狂司郎の頭の中にふと悪戯心が芽生えた。



     **********************



 スッと手すりから背を離した狂司郎が雪耶の目の前に立つ。
 唐突な動きに驚いた雪耶の腰が、狂司郎の腕でぐいと引き寄せられた。
とっさに身体を後ろに引こうとするが、狂司郎の腕がそれをさせずさらに強く抱き込まれてしまう。
 少し斜めに傾けた狂司郎の顔が目の前に迫り、甘いオレンジの香りが鼻をくすぐる。

 あ、と思った時にはもう一方の手で顎を掴んで持ち上げられ、顎にかかる親指にわずかに力が籠められた。
 軽い痛みに思わず雪耶の口が開く。
 その一瞬の隙に雪耶の口内に柔らかく温かいものが滑り込み、その感触に雪耶の身体がぴくりと震えた。

(え?えっ?ええー?)

 雪耶の頭はパニックを起こし身体は硬直してしまう。

 驚きに見開かれた雪耶の視線が、自分をみつめる狂司郎の視線に捕らえられ、羞恥から雪耶の頬に朱が差す。
 自分の歯列をなぞるものが狂司郎の舌だと気づいた時には、雪耶の口の中に固く甘いものが押し込まれていた。

0812kyouyuki-S.jpg 

 (これってキス?狂さんとキス?)

・・・いまだパニックから冷めない雪耶は大きく目を見開いたまま固まっている。
口の中に入ったチュッパチャップスを無意識のうちに舐めていた。

 そんな雪耶を狂司郎が見つめながらフッと笑う。雪耶の陥っている状況を楽しんでいる顔だ。

 雪耶の顎と腰から腕を離した狂司郎に、雪耶の広いおでこがピシっと指で弾かれる。
「イテッ!」
突然の痛みに我に返る雪耶だったが、そのときには狂司郎は背を向けて歩き始めていた。
「行くぞ、デコ!」と肩越しに声をかける狂司郎の背中を雪耶は追う。


穏やかな昼下がり。
柔らかな空気を貫く雪耶の声が響く。

「デコって言うなーっ!!!」


 振り返らず前を歩く狂司郎から「…でけぇ声」と呆れたような声が聞こえた。
だが、その口元がほころんでいるのは、雪耶には見えていなかった。

 

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

テキスト&イラスト by 流々 透雫

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|  ・狂司郎×雪耶 | 21:53 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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