Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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狂雪1. 銀河の果てで待っていて

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…切れねー。



  花壇の前で、久世雪耶は溜息をついた。


  雪耶の父は華道家で、長兄は海外で華道を広めているし、次兄は院生とIT企業の経営の傍ら、名取としての実力を持っている。異母兄弟として生まれた雪耶でさえ、父の華道教室の日には何を措いても必ず大広間に顔を出し、父の元で作法や心得を学んでいる日々だった。


  色素の薄い、透けるような肌と明るい茶色の髪を持つ少年は、高校生にしては小柄で線が細く、まだまだ成長途中といった感じを受けるが、小学校に上がる前から実戦空手をやっている実力からか、彼の表情はどこかしら強気で、センター分けしたストレートの前髪から覗く琥珀色の瞳は猫のように明るく煌いている。


  その瞳を曇らせ、美しいものを愛でる優しさと相まって少し困ったような表情をしているのは、美術の時間に静物画を描くというので、暇があると入り浸っている美術教官室から鳴海先生の代わりに花壇の花を摘んできてあげると言って出てきたからだ。


(…俺、ホントは切花って嫌いなんだよな)


  小さな頃、初めて庭の花を切るところを見て、首を切るみたいで嫌だと泣いた記憶が甦る。
根を張って生きている草木を切ってしまうのが、とても怖かったのだ。

「久世、休憩時間終わっちゃうよ。適当に切って持っていこうぜ」
「うっせーなっ!先に行ってろよっ!」

  丁度、教材を取りに来たクラスメイト二人が、鳴海先生に雪耶と一緒に行くよう言われて、渋々付いてきたことも気に入らなかったのだが、『適当に…』の台詞に雪耶が噛み付く。

「おぃ、行こうぜ」
「先に行ってるから、遅れんなよな」

  離れていくクラスメイトのひそひそ話に

「丸聞こえだよ、バーカ」

  と、悪態をついて花壇に向き直る。

  母方の祖父は、代々の任侠道を貫いてはいるが、所謂『極道』だった。
  まっとうなものも含め複数の企業を経営し、今では「インテリヤクザ」と傘下の組員共々呼ばれてはいても、世間の『極道』という目を拭う事は出来ない。本家のある地元地域への貢献も十分すぎるほど行っているが、祖父の身上を認めているのはその恩恵を受けている地域だけで、広域になると結果的には『極道』から抜け出した見方をする者は少ない。
 言わずとも洩れる自分の血筋は、物心ついた頃から雪耶に周りとは一線を引いた雰囲気を沁み込ませ、やんちゃで毛を逆立てた猫のような雪耶の性格に、輪を掛ける羽目になっていた。

『花の盛りの落ち着いたのを数本でいいからね』

  自分の兄達と歳が変わらないからか、甘えん坊の雪耶が兄のように慕う美術の鳴海先生は、少年が花の状態をちゃんと見切って摘んでくるだろうと解っているようだった。

  先生の言うことは解るけど… と、雪耶は一人ごちる。

  摘む花は決まっている。
でも…鋏を持つ手が動かせない。
急かすようにキーンコーン…と予鈴が聞えてきた。

(あ…やべ…)

  遅れていくとまた、クラスの連中が陰で煩いと思った時。

(えっ!?)

  花壇の向こう側から長身の影が重なってきたかと思うと、そのまま花壇に踏み込んで、数本の花をポキポキと摘んでしまった。花壇を越えて雪耶の前に立った影に花を押し付けられ、慌てて雪耶はそれらを抱える。呆然としながら影を見上げると、長めの銀髪が掛かり翳を帯びた表情の美丈夫が瞳に映った。

(あ…このヒト…3年の有名人…)

  肉食動物を思わせるようなしなやかな肢体に、荊が撒きついているようなイメージを思わせる、白に近い絹糸のような銀色の髪と、透きとおる美しい金色の瞳をした人…。
  名前…なんだっけ。
確かみんなが桜華の白…豹…って言ってたっけ?と、想いに耽りながらまじまじと相手の顔を見つめていた雪耶を、迷惑そうな表情で睨みつけた美丈夫がボソっと呟いた。

「それでいーんだろ?」
「えっ?…あ、うん」

  はっ…と我に返った雪耶を一瞥して、束ねた後ろ髪を靡かせながらその場から離れていく。彼の摘んだ花はどれも、雪耶が摘んでも差し支えないだろうと思っていたものばかりだった。

「あのっ…」

  雪耶の声に振り返った美丈夫の瞳には、やはり暗い翳りがあった。
記憶の片隅にある同じような翳りを手繰るけれど…思い出せない。その瞳がめんどくさそうな表情を見せたとき、何故かちくっと胸が痛んだ。

「ありがとう…ございます…」

  謎の痛みを生む視線から目を逸らして、もごもごと小さな声でお礼を言う。ふいに長い指が伸びてきて、雪耶のおデコをぽんっと弾いた。

「って!」

  コンプレックスでもあるおデコを掌で隠しながら、睨みつけるように視線を上げると、その人は既に遠目に離れた後姿だけになってしまっていた。その姿を少し名残惜しむように見つめた後、雪耶は摘まれた花を大事そうに抱えなおし、美術教官室へと歩き始めた。
  あの翳りのある瞳と、おデコを弾かれた悔しさが心に引っかかってはいたけれど、雪耶の選んでいた花を、間違いなく摘んだ人のことを想うと、何故か嬉しくなる。


  自分にとって、あの存在は遥かに遠そうだ。
冷めた雰囲気は近寄りがたい気もする。


でも…何時か。


  あの瞳の傍に、自分が居る日が来たらいいと雪耶は思った。

 

 *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

イラスト&テキスト by  辰城 百夏

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