Möelva-B×B-

絵師集団ciliegioによるオリジナル作品オフィシャルブログです。男同士の恋愛が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

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嵐×雪耶INDEX

★嵐×雪耶
桜華学園の可愛い1年生コンビ・嵐と雪耶。友達以上になれるでしょうか…?


◆小説◆
【勝利の味はKISSの味】 1. 2. 3.
 


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|  ・嵐×雪耶 | 19:34 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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◆勝利の味はKISSの味? vol.3◆

 一点、また一点と相手ゴールを攻め続けて、後半戦も残りあと30秒。
3-0でこのまま逃げ切れば、桜華の勝ちだ。
今は千田工業高校の攻め。
桜華のフィールドへ向かう相手のドリブルを横合いから桜華選手が掠め取り、雪耶へとパスが続く。
相手MFのスパイクが、雪耶目掛けてスライディングしてくるのを見て、嵐が声を張る。


「ゆっきー!跳べっ!」


 目線で答えた雪耶は、ボールを蹴り上げて、自らも跳びあがる。
だが、空中に跳んでは、雪耶目掛けて蹴りあがったスパイクをかわすことが出来ない。
フィールド上の仲間や観客席のみんなが、危ないっ! と思った瞬間。
空手の回し蹴りさながらの動きで、雪耶のスパイクが相手のスパイクの足裏をがっちりと塞き、浮力を補っていた片足は、見事にボールを捕らえて再度軽く蹴り上げた。
それ目掛けて今度は嵐が縺れた二人の上を跳び越える。
ボールを蹴り上げた雪耶の足裏を踏み台にして、高く上がったボールに追いつき、今度はそれを地面に向けて蹴り降ろす。


「あっ!黒嵐(ブラックストーム)だ!」


観客席の楓が、興奮気味に叫んだ。
周りに居た桜華の応援者が一斉に楓に振り向く。
二人の従兄弟の彰が、面食らったような顔で聞き返した。

「ブラッ…?何だ?それ」
「黒嵐!嵐はボールに変な回転掛けて蹴るのが得意なんだよ。」
「回転!?」
「特にあの上から蹴り下ろすボールには勢いと一緒にいやらしいくらい回転が掛かってて!」
「ほぉ~!」
「それを蹴ったら、変な方向にボールが飛んでくの!嵐の得意技!」
「変な方向?」
「うん!何処に飛んいくかわかんないんだ!」
「……それって」


 詰めの甘い嵐らしい技だ…と、周りに居た誰もが溜息をついた。
願わくば…桜華のチャンスになる方向に飛んでくれ!と、誰もが心の中で神に祈る。

 地上に落とされた黒い嵐は、その場で一瞬止まったように見えた。
それを目掛けて相手側の選手がボールを捕らえて蹴り上げる。
グラウンドにいる全員が息を呑んだ。
シーンと静まり返ったフィールドに、ホイッスルの高い音色が響く。


『オウンゴール!』


 相手側の選手が蹴ったボールは、蹴り上げた方向とは真逆の、味方ゴールに吸い込まれた。
自殺点を喰らった相手チームは呆然と立ち尽くしている。
 雪耶目掛けてスライディングしてきた相手は、雪耶に喧嘩を吹っかけて、嵐の肘に怪我をさせたヤツらと試合前に話していた選手だった。
嵐のボールを蹴ってオウンゴールを決めた相手は、雪耶に肘鉄を喰らわせた張本人だ。

嵐と雪耶はお互いの敵を目の前に、指を突きつけて言い放つ。


「よくも汚い手を使って試合に臨んでくれたよなっ! 正々堂々と戦えねーテメーらに、桜華が負けるわけがねーんだよ!思い知れっ!」


 試合終了のホイッスルと共に、フィールドと観客席から盛大な歓声が湧き上がる。
桜華学園サッカー部一年生の初の交流試合は、4-0の白星で飾られた。



 試合終了後、サッカー部のみんなに揉みくちゃにされながら、選手控え室に帰ってきた嵐と雪耶は他の選手に遅れてシャワーを浴び、誰も居なくなったロッカールームで着替えていた。
 普段サッカーなどしない雪耶は、フィールドを走り回ってクタクタになっていた。
おまけに、今までに経験が無いほどの人数から揉みくちゃにされたお陰で気疲れしてしまって、油断すると今にも上下の瞼がくっ付きそうな感じだ。

 トロトロと着替えている雪耶の額の傷に、嵐がそっと手を伸ばす。
それに気付いて雪耶が顔を上げた。


「…何?」
「ごめんな。ゆっきーに怪我させた…」
「…お前のせいじゃないじゃん」
「でもさ…試合に出させたのは俺だし」
「お前を喧嘩に巻き込んだのは俺だ」
「それ、ゆっきーのせいじゃないじゃん」


 ふと、お互いの瞳が逢う。
少し見下ろす、日焼けした髪と同じ鳶色の瞳。
反対に少し見上げる、明るい琥珀色の瞳。

 ずっと一緒に居れたらいいのに…

お互いに想いながらも、相手には言えない言葉が甦る。

なんだろうか。
この気持ち。
俺たちは「友達」だけど。
喧嘩ばっかりの毎日だけど。

こいつの居ない自分が想像出来ない。

だって
自分の気持ちよりも、相手の事のほうが手に取るように解るから。


「…ゆっきー」


見詰め合ったまま、嵐の顔がゆっくりと雪耶に寄っていく。
肩に手を置いて、こつんとおでこを合わせて瞳を閉じた。


「俺、頑張ったご褒美が欲しい…」
「はぁ?」
「今回だけ…怪我をおして頑張ったしさ」
「何が…欲しいんだよ?」


嵐は閉じていた瞳を開く。

間近で見る雪耶の瞳は、甘い色の宝石みたい。
色白で女の子みたいにコロコロと変わる表情。
自分にだけ見せてくれるその表情が可愛くて好き。
そういうと殴られるから言わないけど。

でも今は…眠そうで隙だらけ。


「勝利の…美酒?」
「…? 勝利の…何?」


嵐のおねだりに
都合よく小首を傾げた雪耶の唇まであと数センチ…。
というところで、いきなりロッカールームのドアが大きな音を立てて開いた。
雪耶の身体がびくんっと震えたのと同時に、嵐の顔ががばっと離れる。


「雪っ!! 怪我大丈夫かっ!?」
「雪っ!! 俺に怪我見せて!ちゃんと手当てしたの!?」


 選手の控え室があるところへはなかなか入れてもらえなかった観客席のメンバーがドヤドヤと、今更のようにロッカールームに入ってきた。
当然の如く雪耶の二人の兄は嵐から彼を奪い取って、ブラコン振りを発揮している。

 嵐の口から、大きな溜息が漏れた。
それを聞きとがめた彰が彼を気遣う。


「どうした?嵐、今回は流石に疲れたか?」
「彰兄…、いや、平気だけど」
「…だけど?」
「どうやら、勝利の美酒は味わい損ねたようですね。一之瀬嵐」
「何?嵐、美酒がなんだって?」
「ぎゃーっ!! な…寮長!?」


なんで!?
なんで寮長解ったの!?
つか、何で知ってんの!?

 ニヤつく寮長に焦る嵐を横目に、狂司郎がふっと笑った。
そのまま目線を雪耶に移してからロッカールームを後にする狂司郎の隣に、彰が静かに並ぶ。
廊下で待っていた数人の桜華の生徒が、少し離れてその後をついて行く。


「面倒くせぇ…ついてくんな」
「まぁそういうなよ。俺も、あいつ等も、きっと虫の居所が悪いんだ」


 これから、二回戦突入だ。
後輩を可愛がってくれたお礼と、桜華を舐めたやり方にたっぷりお返ししないとな…。
廊下を去っていく無言の背中達がそう語っていた。

 千田工業高校の番張り連中が、何処かの誰かにボロカスに伸されたという噂が流れるのは、それから数日後のことである。

 自分たちの知らないところで、そんなことになっているとは想像もしていない嵐と雪耶は、帰りのバスの一番後ろの席で凭れ合って爆睡中だ。
 夢でも見ているのか、嵐の口からとんでもない寝言を聞いたのは、何故か隣に陣取っている寮長、ただ一人だった。


「…ゆっきーに…キスくらいさせろよ……バカヤロウ供…むにゃむにゃ……Zzzzz」


 寮長の瞳がキラリと光った。
寝言が示すとおり、勝利の美酒どころか、嵐と雪耶の関係は前途多難な様相を呈していた。


勝利の味はKISSの味?―END―

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|  ・嵐×雪耶 | 17:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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◆勝利の味はKISSの味?vol.2◆

 実戦空手をやっているだけあって、雪耶のサッカーの飲み込みは意外と早かった。
一番の問題であるチームメイトとの関係も、嵐がベンチで司令塔となり全体の動きをバックアップするという条件で納得させた。
実際、雪耶の動きを見て他のメンバーも少なからず感心したようで、嵐としては願ってもない好感的な反応だった。


「よう!嵐!腕の調子はどうだ?」


試合当日、観客席から聞きなれた声がする。
ベンチのすぐ後ろに陣取った一団に、振り向いた嵐の顔がちょっと引き攣った。


「…え~っと、もうだいぶ良く…って、みんな試合観にきてくれたんですか?」
「今日は雪耶の活躍を楽しみにしてきたんだよ」
「まぁ…嵐の代役には心もとないが…」
「嵐、今日は試合出れないけど、みんなで頑張れよ!」
「……」


最初に声を掛けてきた、雪耶の次兄、季耶を筆頭に、海外から帰国している長兄悠耶。
嵐の従兄弟の一之瀬彰に、嵐の双子の弟、楓。
何故か学園一恐れられている『桜華の白豹』との異名を持つ英狂司郎までも…。


「…この人達…どんな繋がりなんだよ…」


 溜息をつく嵐の元に、フィールドで身体を慣らしていたメンバーがベンチに帰ってくる。
面々が、観客席にいる先輩や家族の顔を捜しながら、やっぱりベンチ真後ろの一団に引き攣った笑みを見せていた。
しかも、よくよく見ると、今まで試合を観に来ていたことなど無いだろうと思える、学園内で見知った顔までもがちらほらと散らばって見えていた。


「嵐…後ろは気にすんな!」
「ゆっきー、お前って…意外と人気者?」
「…アホ。お目当ては俺じゃねーよ…」
「?? じゃ、誰?」


その問いに、雪耶の顔が鋭くなる。


「俺が喧嘩吹っかけられた相手、覚えてっか?」
「えっ? 私服だったから…あんまり」
「あいつら、千田工業高校の番張りだった」
「えぇーっ!? マヂ!?」


 嵐は驚いて相手ベンチを見る。
端で話を聞いていた他のメンバーもが、ギョッとして相手ベンチへ目を向ける。
サッカーの選手は細身に見えるが意外とガタイはいい。
嵐や雪耶と比べると、背丈も身体の厚みも相手のほうが数段勝っている。
その中の一人と話をしている観客席の生徒の数人に、嵐は見覚えがあった。


「…ゆっきー、もしかして…」
「狂さんが教えてくれた。あいつら汚い手使ってんな…って」
「狂さんが!?」
「俺らの喧嘩…通りすがりに見かけたらしい。後から調べてくれた」
「でも…なんでゆっきーが…?」


不意に雪耶が嵐を正面から見詰める。


「俺が、お前と何時も一緒にいるからだよ」
「…っ!!」
「俺みたいのが嵐と一緒にいるから、目付けられたんだ」
「…でもさっ!」
「お前を直接狙ったら、向こうだってヤバイだろ?」
「…そんなっ」


試合前に、メンバーの表情が硬くなっていく。
サッカーが好き。
それだけで一生懸命やっているメンバー誰もが、理不尽さを感じている顔だ。
不意に雪耶がベンチ後ろに向かって大声を上げた。


「悠兄っ!季兄っ! 今日の俺のポジションDMFなんだぜ!」
「雪がDMF!? マジかっ!?」
「すごいじゃないか雪。 当然、試合には勝つんだよね?」


呼ばれた雪耶の二人の兄が、ニコニコと返事を返す。
二人も事情は知っているのか、嵐の知っている二人の笑顔とは雰囲気が違うのが怖い。
それに…一緒に居る面々、近くに座っているサッカー部の先輩たちの表情も…。
雪耶が相手ベンチに向かって指を差して言い放つ。


「あいつら、ボッコボコにしてっやっから!」
「…ゆっきーっ!煽ってどうすんだよっ!!」
「だって、どうあっても、俺の腹の虫が納まんねーの!」
「ディフェンスの集中砲火浴びるぞ!?」
「…俺が負けると思ってんのかよ?」


どっからそんな自信が湧いてくるのか…嵐は呆れて思わず噴出してしまった。
二人のやり取りを見ていたほかのメンバーからも、「いいね~!」とか「言うね~!」という台詞が上がってきた。
その声に後押しされて、嵐の腹も座ってくる。


「…よし! みんな、裏じゃなんか面白くねー事が色々あるみたいだけど、この試合戴くぜ!」


なんとなく纏まりかけたチームを引っさげて、嵐のベンチでの戦いが始まる。
何時も一緒にサッカーをしているメンバーの動きも、雪耶の動きも手に取るように解っている。

やってやろうじゃん。
汚い手使いやがって。
桜華のサッカーがどんなもんか、思い知らせてやる。


嵐の怪我をしていない方の拳が握られると同時に、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。




 始まった試合は、中盤を迎えて一進一退の攻防が続いていた。

 相手の実力もなかなかだったが、桜華のメンバーの動きは、やはり何時もとは違っていた。
練習の時に叩き込んだ試合の流れや作戦通りに動いてはいても、相手もこちらがフルメンバーで無い事は承知の上だ。不慣れな雪耶への攻撃は想像よりも過激で、相手からボールを奪うのも、自分のチームにボールを繋げるのも、暴力と紙一重なラインで繰り広げられていた。
 当然、他のチームメイトも頑張ってはいるが、雪耶への攻撃がハンパじゃなく、巻き込まれたただけでも煽りを喰らって怪我をしかねない恐怖のために、迂闊に近づけない。
それでも、嵐の的確な指令どおりにメンバー全員が試合に集中していた。
雪耶も持ち前の脚力と俊敏さで相手の攻撃を掻い潜って、嵐の指令に忠実にボールの奪取やディフェンスラインでの役割に専念していた。

 …が。

 後半に入って、得点が上がらないことに焦れた相手側の一人が、雪耶の近くに居たセンターハーフの一人に攻撃するのが目に入った。
嵐が気付いて声を上げるのと、雪耶が動くのがほぼ同時。
チームメイトを庇って無理やり間に入った雪耶の額に相手の肘鉄がヒットするのが、嵐にはスローモーションで見えるようだった。

 反動で、雪耶の身体が吹っ飛ぶ。

 カッっとなって立ち上がった嵐が殺気を感じて後ろを振り向くと、ベンチ後ろの雪耶の兄二人が今にも飛び降りそうな勢いで立ち上がっている。
その二人を狂司郎と彰が何気に押さえているのが見えた。
 余談だが、華道家の家に生まれながらも、悠耶は弓道、季耶は合気道を学生時代ずっと習っていて、その腕前もさることながら、「喧嘩したら俺が負ける」と雪耶が言うほどの実力の持ち主だ。


「ホント勘弁してよ。 マヂで…すげーブラコンなんだから、ここの兄弟っ!」


 嵐のぼやきと同時にホイッスルがなって、審判の胸ポケットから黄色いカードが飛び出した。
肘鉄を喰らわせた相手の選手と、チームメイトに身体を支えられて起き上がった雪耶に、そのカードが向けられる。


「なっ…なんでゆっきーがイエローなんだよっ!!」


 嵐がベンチから飛び出して叫ぶ。
フィールドに居た桜華選手全員も「なんでっ!?」という表情になっていた。
審判の判定は、雪耶の行動も危険行為と見做されたようだった。


「…上手く肘鉄を隠したな」


 観客席からぼそっと、狂司郎の声が響く。
その声に再度嵐が振り向くと、サッカー部の先輩達全員も立ち上がって怒りを顕にしている。
試合前にちらほらと見えた顔見知りの人物たちも、何気に立ち上がっているのが見えた。

 なんか…後ろまでヤバそうな雰囲気なんだけど…。

 ふと、肩を叩かれて嵐が振り返ると、試合等があるときには何故か運動部のマネージャーも兼ねて参加してくる寮長が傍に立っていた。


「一之瀬嵐、ぼーっとしていないでタイムです。久世雪耶、血が出てますよ」
「えっ!?」


 慌てて審判にタイムを告げて、フィールドの傍らに寄った雪耶に駆け寄る。
一緒に来た寮長の片手にはちゃんと救急箱が抱えられていた。
チームメイトも三人の元に駆け寄ってきていた。


「ゆっきー!大丈夫か?傷見せて!」
「嵐…大丈夫、大したことねーよ。ちょっと避けそこねちまった」
「あの角度では避けられなくて当然でしょう」


 肘鉄は目の斜め上辺りに当たったらしく、ぱっくりと開いた裂傷を手早く手当てしながら、寮長が告げる言葉に、嵐の怒りは頂点に達する。


「下手をしたら目に直撃だった…このくらいの裂傷で済んで良かったくらいですよ。久世雪耶」
「…っ!くそっ!!!」
「…嵐? てか…なんで寮長がここに…??」


 雪耶の??を他所に、腕に巻いていた三角巾を投げ捨てると、嵐が大股でベンチに戻る。
監督に何かを告げたかと思うと、いきなりジャージを脱いでスパイクを履き始めた。


「嵐っ!何やってんだよ!?試合に出る気っ?」
「無茶だよ!一之瀬っ!」
「そうだよ!こんだけ荒れてる試合なんだぜ?久世だって怪我したくらいなのに…」
「だからだよっ!!!」


 周りの心配を一喝して、嵐は寮長にテーピングを頼んだ。
無理して捻るとまだ痛いが、しっかりテーピングしていれば、余程変に曲げない限り大丈夫そうだ。
寮長は、気休め程度だが…といいながら、薄いクッション材の入ったテープで肘を補強してくれた。


「おらっ!みんな、タイムアウトだぜ! 高橋、ポジション変わってくれるか?」
「いいけど…一ノ瀬、大丈夫なのか?」
「平気だって! この試合、絶対勝つぞ!一年生だからって桜華のサッカー舐めて掛かるとどんな目に逢うか思い知らせてやるっ! ゆっきー、まだ行けるよな?」
「…行けます。行けますよっ! こうなったらもう何言っても聞きやしねーんだから、こいつ」
「ぶっ。久世って一之瀬の事、ほんと良く解ってんだな」
「俺、久世ってもっと怖くてとっつき難い奴かと思ってた」
「俺も! ホントは優しいヤツなんだな!三田のこと庇ってくれてありがとな!」
「当たり前じゃん! ゆっきーは俺の一番なんだからっ!」
「なっ…!なんだよ!?その…一番って」


嵐の問題(?)発言に、雪耶は一歩下がり気味で戦き、チームメイトはおぉぉぉっ!っとどよめく。

 何?そのどよめき…なんでみんなの目キラキラしてんの?? 寮長もなんでニヤニヤしてんの??

 疑問符だらけの気持ちで雪耶は、みんなと一緒にフィールドに戻る。
ホイッスルが鳴り響き、試合が再開された。
嵐のポジションはフォワード、セカンドトップだ。
サッカーのポジションとしては花形のセカンドトップ。
『ファンタジスタ』と称されるスター選手も、このポジションだ。
将来、そう賞賛される選手に嵐もなっていくのかなと、雪耶は思う。

 どんなに離れても、どんなに遠い存在になっても、嵐とは親友で居たい。

ふと、雪耶の心にそんな想いが浮かぶ。


「ゆっきーっ!」


嵐の声にはっと我に返る。

今は試合に集中しろ、俺。
嵐とみんなの為に、全力を尽くせ。
俺に与えられたポジションが、今は俺の全て。
この間の喧嘩と、嵐の怪我と、額の傷のお礼は、きっちりさせてもらう。

 フィールドを駆ける雪耶の口元に、不敵な笑みが浮かぶ。
嵐がそれを見逃すわけがない。
雪耶が本気になったのを見て、嵐の気持ちも高揚していく。
嵐の機敏な動きにつられて他の選手の動きも断違で良くなっていた。

to be continued―

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|  ・嵐×雪耶 | 20:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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◆勝利の味はKISSの味?vol.1◆



「だからさっ! この通りっ!」


 日に焼けて赤茶けた髪を降り下げて、一ノ瀬嵐は、上目遣いに目の前に立つ友人を見詰めた。
見た目だけは、どちらかというと可愛い顔をした久世雪耶が、うんざりした表情で嵐のことを見詰め返している。
誰も居なくなったサッカー部の部室で、嵐は雪耶に折り入ってのお願いをしている最中だ。


「…やめろよ、嵐、そういうの似合わねーから」
「ゆっきーだから、こうして頼んでんのっ!お願いっ!」


 サッカー部の嵐は、スポーツ選手らしく、いい感じに日焼けした人懐っこい顔を、ちょっと情けなさそうに歪ませながら、両手を合わせてまた頼み込む。
 スポーツ特待生として桜華学園に入学した一之瀬嵐は、身長も169cmと成長盛りの伸び盛り。
見た目は細身の身体も、流石に毎日鍛えているだけあってしっかりと筋肉もついていて、明るい性格に屈託の無いその笑顔のお陰で、先輩や同級生にも友人が多く、彼の周りは何時も賑やかで楽しげだ。
男子校である学園を一歩出れば、他校の女の子が待ち伏せしていたりする人気者。


 そんな嵐は…
クラスも違うし帰宅部の、見た目とは違ってヤンチャで喧嘩っ早く、家柄では不穏な噂が絶えなくて、同じクラスの人間でさえちょっと付き合いを遠慮したいと思うような久世雪耶と、何故か何時も一緒に居る。
性格も雰囲気も違うのに、なんで何時も一緒なのかと、周りが不思議がるくらいだ。
そんなことを気にしていないのは、当の本人くらいなものである。
何時も一緒の雪耶でさえ、どうしてそんな人気者が自分に懐いているのか不思議に思っている。


「今度の一年生だけで行われる交流試合、ゆっきーの力が必要なんだよ!」
「…なんで俺なんだよっ!?」
「これの責任もあるじゃん?」
「なんで、それが俺の責任なんだよっ!! 勝手に止めに入ったくせにっ!」
「いやぁ…つい?」
「ついじゃねーっ! 俺だけなら勝てた喧嘩だったのにっ!!!」


 サッカー部一年生の中では、抜きん出てその才能と実力を発揮している嵐の左腕には、痛々しい白い三角巾が巻かれている。
 二日前、ひょんなことから雪耶の喧嘩に巻き込まれた(というか自ら巻き込まれた)せいで、左腕を捻って肘を痛めたためだ。
サッカーは足技が目立つ為に忘れられがちだが、意外と格闘技のようにハードな肉弾戦。
2週間後に控えた一年生だけで行われる千田工業高校との交流試合に、悔しいけれどこの腕では出場出来そうもない。


「それに俺、サッカーのルールなんて詳しく知らねーし、チームプレイって面倒で嫌だし…」


 雪耶の表情が、少し申し訳なさそうな困った顔になる。
嵐は、雪耶が他の人間にそんな表情を見せたりしないことを充分に知っていた。


 桜華学園の高等部になってから出逢った雪耶は、どんなに笑いかけても、構っても、最初は借りてきた猫みたいにむすっとして、迷惑気な顔をしているだけだった。
少しは自分と居る事に慣れてきて、バカ騒ぎやふざけ合いや悪戯を平気でしているけれど、今だって周りに人が居るときには、こんな表情を見せたりしない。

 自分にしか見せてくれない表情がある。

嵐にはそれが妙に特別な感じで嬉しかった。
今までだって友達は沢山居た。
今だってちゃんといる。

 でも…

自分から寄っていかなくても、自然と友達が集まってくるのに…
大抵一人で居るからというのもあるけれど、何故か雪耶だけは自分が追っかけていた。
雪耶が自分にだけ見せる表情があると気付いたとき、こいつと一緒に居てよかったと思えた。
傍に居ることが当たり前になるくらい、気になるヤツ。

 へんなの。

と、思うけど。
居ないことが不思議。
喧嘩ばっかりしているけど、それも当たり前。
自分の表情や態度で、雪耶のそれが変化するのが楽しい。
他人と一緒に居る事が、こんなに自然と思えるのは初めてかも…と思う。

 もう一押しだな。

と、嵐は改めて雪耶におねだりするみたいに、上目遣いで手を合わせる。


「2週間、俺が雪耶に付きっ切りでサッカー教えるから!他のヤツには文句言わせねーから!」
「……2週間も…面倒」
「ねっ!ゆっきー!頼むよ!お願いっ!」
「……」
「嵐の男としてのお願いだよ」


雪耶の口から、仕方なげな溜息が漏れた。
嵐の「もう一押し」は確信に変わる。


「流石ゆっきーっ! ありがとう!すっげ嬉しいよっ!」
「まだ何も言ってねーしっ!」
「でも男のお願い、ゆっきーなら聞いてくれるもん!」
「…華道と空手の時間だけは、絶対譲らねーからなっ」


嵐は、そんなの当然! と、頷きながら満面の笑みで雪耶を見詰めた。
雪耶が「うっ…」と小さく呻きながら、困ったようにそっぽを向く。
素直じゃない親友を前に、嵐は思う。

なんかかわいー。

そんな台詞一言でも口にしたら、雪耶にボコボコにされるから言わないけど。
だから…


「雪耶、サンキュー」
「…っ!ちょっ…」


自分より少し背が低くて、自分より少し細い身体をギュっと抱きしめてお礼を言う。
ちょっと過激なスキンシップも何時ものこと。
そして…


「そんな台詞、試合に勝ってから言えよっ!」
「…って!」


雪耶がごつん! と、嵐の頭を小突く。
これも何時ものこと。
二人で居る事が、ごくごく自然な当たり前のこと。
これからも、ずっとこんなに楽しく二人でやっていければいいな…
と、嵐は思う。

いつか大人になって
お互いの向かう道が違っても

いつまでも一緒に居れたらいい。

お互いがいつも支えになれる関係だったらいい。
そんな嵐の、珍しく真面目な想いを他所に、2週間はあっという間に過ぎていく。

 

 to be continued ―

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